計測押込み法を利用した非光学式ブリネル硬度の測定
ブリネル硬度試験は材料の強度を迅速に評価できる代表的な方法であり、硬度値の変化は材料特性の変化や残存寿命を予測する重要な指標として活用されます。
従来のブリネル硬度測定法では、圧痕の直径を光学的に測定する必要があり、一定の装置と時間が必要です。
しかし計測押込み法を利用した非光学式ブリネル硬度測定は、荷重と押込み深さデータにより、より効率的かつ正確な硬度評価を可能にします。
この方法は荷重-深さ曲線を解析して押込み深さを補正し、これを基に硬度を計算することで、より精密な結果が得られます。
ブリネル硬度試験の原理
ブリネル硬度は球形圧子を用いて一定荷重を試験片に加えた後、押込み痕の直径を測定して評価します。図1に示すように、直径D(mm)の球形圧子が
荷重L(kgf)を試験片表面に加えると、永久的な押込み痕が形成されます。この痕の直径d(mm)を精密に測定してブリネル硬度を算出します。ブリネル硬度の計算式は次の通りです。
従来法の限界:光学的観察
従来のブリネル硬度試験は押込み痕の直径を光学的に測定する必要があり、これは時間がかかり高解像度の光学装置を要する場合があります。
また、試験片表面の状態や押込み痕の形状不規則性により測定誤差が発生しやすいです。こうした問題から、より効率的かつ正確な測定方法が求められています。
計測押込み法の導入
計測押込み法は光学的観察なしで荷重-深さ曲線を解析し、押込み痕の大きさを推定する精密な手法です。この方法は荷重適用中にリアルタイムで押込みの深さを直接測定することで、光学的な測定に代わり試験効率と精度を大きく向上させます。荷重-深さ曲線は圧子が試験片に押込まれる際の荷重と押込み深さの関係を表します。
前述の曲線のみでは正確な押込み深さを推定しにくいです。これは材料が弾性変形と塑性変形を同時に起こすためです。
弾性変形と塑性変形の補正
荷重-深さ曲線から得た変位データを用いて正確な押込み深さを推定するには、材料の変形挙動を精密に分析し補正する必要があります。
そのために次のような補正方法を用います。
弾性変形 (hd)
荷重が加わると発生する一時的な変形で、材料が押込み荷重を受ける時に現れます。最大押込み荷重Lmax、初期接線勾配、材料定数を利用して計算できます。
塑性変形 (hp)
塑性変形は圧子が材料に永久的な変形を生じさせる際に発生します。
これを補正するために、材料の加工硬化指数や変形係数(max/定数)を使用します。
ここでRは球形圧子の半径です。
硬度の計算
正確な押込み深さが決定すれば、これを基に押込み痕の直径を算出できます。球形圧子の形状と補正された接触深さを用いて、最終的にブリネル硬度を計算できます。
この方法は計測押込み試験を通じて荷重-深さ曲線を直接解析し硬度を評価でき、光学的観察なしでも正確なブリネル硬度が得られる利点があります。
全体要約
計測押込み法を利用した非光学式ブリネル硬度測定は、従来の光学的測定法に比べて時間とコストを削減しつつ高い精度を提供します。荷重-深さ曲線解析による精密な押込み深さ
推定と補正技術を活用し、より信頼性の高い硬度測定結果が得られます。これにより、様々な産業分野で材料特性の変化や品質管理を効率的に実施できます。